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【感想】『ダブルミンツ/中村明日美子先生』―最後の逃避行―

ダブルミンツ

ダブルミンツ

俺はこの目に殺されたのだ――

こんばんは、氷太よ。

今日は中村明日美子先生の

『ダブルミンツ』

を頂いていくわね!

 

この漫画もう見た感じから察知できると思うけど

結構邪悪な物語よ・・・!

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いわゆる青年誌的な邪悪さなのかと問われると、それはちょっと違うような気がする。

相手への想いが歪なのよね。

そしてこの物語は、あくまで「主人公2人の世界では」という部分が強調されて描かれているの。

世間一般の常識から推し量ると限りなく「不正解」であろう選択肢を、主人公2人はことごとく採っていく。

だけども2人の世界ではそれが「正解」なのよね。

この歪さも、2人の正しい有り方なのよ。

そういった歪みに満ちた2人の関係性が、やがて何を見出し変化していくのかを描いていく事になるわ。

あらすじ 

『女を殺した――』

電話の向こうから聞こえてきた高飛車な声は、高校時代の同級生・市川光央だった。

同じ名前を持つ男・壱河光夫の胸中に、かつての隠微な記憶が蘇る。

忘れていた過去が、再び光夫を熱情の中に引き戻す。

共犯者として再会を果たした二人の主従関係は、少しずつ新しい形へと姿を変えてゆく……。 

こんな感じね。

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もう初っ端からやばい展開よね。

冒頭の2人の再開は完全にコメディ要素を排除した人生オワタ状態から始まるわ。

完全に詰んでしまっている。

そんな中逃避行を繰り広げていく所から、2人の関係が描かれていく。

ちなみに今までアタシが読んできたBLの中で、ぶっちぎりで「反社会性」が盛り込まれた漫画とも言えるわ。

登場人物

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市川光央(表紙左)×?

この漫画のドS担当。

反社会的な行動を常に取っている。

冷酷でありながら、どこか子供っぽい所もある。

*以下「S男」と呼称します。

壱河光夫(表紙右)×?

この漫画のドM担当。

会社員で知性の高い人。

あまり他人に関心がないが、S男には執着心がある。

*以下「M男」と呼称します。

感想

まず念頭に入れておいて欲しい事があるわ。

内容が内容なだけに、例えばはらだ先生の「あさとよるの歌」

なんかが受け付けなかった人は恐らくこの漫画も無理なんじゃないかとは思うの。

「アタシはヨネダコウ先生の“囀る”マイスター。裏社会の描写とかオールOKだお

とかほざいている人は尽くノックアウトされる危険性がある。

 

もうね、BL漫画でよくあるエッセンス的なレベルで留まっているようなバイオレンスさ加減じゃないのよね。

まさに「蹂躙」と「屈服」を描いたバイオレンスさなの。

「そんなになの!?」ってくらい身構えて読めば大丈夫だとは思うけど・・・。

え?

「ウシジマ君」が愛読書だって?

あ・・・チョリーッすww

今まで書いてきた事全部忘れて読んでくださいww

 

そして物語冒頭。

「女を殺した」という部分からもう読者の頭の中は

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となりっぱなし。

だってさ、いかに高校時代に特別な思いでがある(しかも甘い思い出ではない)とはいえさ・・・。

「女、殺してもうたがな。ちょっと来てくれへんかな?」

「よっしゃすぐ行くわ!一緒に逃げるンゴwww」

ってならないでしょ?

でもこの「そこまでするか?そういう行動するか?」っていう部分に対する違和感こそがこの漫画の抱えている本質であり、2人にとって相手は唯一無二の自分の半身とも呼べる存在である証明なのよね。

*注意

  •  本編は非常にスリリングでシリアスなお話なのです
  •  こんなエセ関西弁やネット用語が飛び交うようなやり取りはありません。
  •  マイルドに伝えるための措置であります。

そして映画「ディパーテッド」ばりの逆転劇が繰り広げられていく。

・・・ごめん、ちょっと言い過ぎねこれは。

ただ秀逸なのは間違いない。

主に2つの逆転劇が始めの話では描かれていくわ。

  •  「女を殺した」故の逃避行の逆転劇。
  •  M男によるS男への下剋上。

もうね

「えええっ!?どういう事っ!?」

の連続。

このハラハラ感はBL史上最高だと思う。

 

M男の下剋上は、過去の恨みからだったのかしら・・・。

と推測をしながら読んでたけども

アタシってほんとバカ・・・。

こんなに愚かで安直な推測通りな訳ないじゃないの・・・!!

 

だってこれBLだもん。

男同士っていうのが絡んでこないハズないんだもの・・・!!

なぜM男がS男の弱みを利用してS男よりも優位に立とうとしたのか?

これ以上ないくらいに説得力のあるものだったわ。

と同時に「凄い変態さんだな」とも思ったけども。

 

あとはあれかな。

やっぱり中村明日美子先生のすごい所って言葉で飾らなくても、BL要素を行動で魅せられるって事かなあ・・・。

「愛してるよ」よか「お前が好きだ」とか、愛を語る部分は一切ないわけよ。

だからこそ序盤の物語に凄く退廃的で、「これBLか?」ってくらい青年誌顔負けの内容になってるわけだけども、読んでいく内にいつの間にかBLの枠に戻ってるんだもの。

「あれ?ここで終わっちゃうの?」

って少し不完全燃焼を起こしてしまうんだけど、これが実にこの2人の漫画らしくて良い。

歪な形を持った2人の関係性が、きれいに幕を閉じるなんて考えられないものね。

正直、言葉で補完してもう少し長く読みたいとは思ってしまうのよ。

でもきっと違うのよね。

2人のキャラクターに合わせ言葉では語らず、10のうち8か9に留めておく事こそがこの作家さんの素晴らしい作風なんだと思ったわ。

 

ただ残念な部分もある。

物語は大まかに分けると3つになるのよね。

  •  逃避行
  •  裏稼業・繋がり
  •  また別件での逃避行

ただこの漫画、1つ1つが短編のようで物語同士であまり繋がりがない事。

ここが残念ね・・・。

S男が屈服させられる所とか、凄い見応えは随所にあるんだけど、それぞれの物語の入り込みで変な違和感を感じさせられてしまう。

時系列が一気に飛んでいるような、そんな違和感。

同じ設定、同じ世界観なんだけど、また別の世界の2人を見ているようなそんな感覚になるのよね。

読み切りで終わるはずだったのが、読み切りを重ねて1つの漫画になったのだったら不可能だとは思うけど、もう少しだけ前の話の流れを踏まえて描いてほしかったかなと思ったわ。

まとめ

面白いんだけど、万人受けするような作品ではないわ。

BL漫画を支えている女性層にも、手放しでオススメできる作品でもない。

でもこの漫画で描かれる「BL」というものを越えた、一心同体の「男達の物語」は是非読んでもらいたい。

魂を綴っていると言っても過言じゃない内容だから。

最後の最後で見せるM男の複数に分断されたコマは、絶対に脳裏に焼き付く事間違いなしよ。

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